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鹿肉をローストビーフならぬローストベニソンにしてみた

料理

親戚に猟師がいて、毎年山のような山のめぐみが送られてきて食べるのに困っているという贅沢な悩みを打ち明けられたので、その解決に一肌脱いでみることにした(偉そう。

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ガチガチに冷凍された鹿のロース肉。まずは冷蔵庫に一晩置いてじっくりと解凍。急激に解凍するとドリップが大量に出て旨味が逃げ出すというので注意が必要。

まずは人には言えない食べ方で食べてみる。

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美味い! 最高に美味い! 半解凍の鹿肉が口の中でとろける!!!

怖いのは食中毒だけど、業務用の冷凍庫で急速冷凍させているというので寄生虫の方は大丈夫だろう。怖いのは肝炎ウィルスだけど、それは主に糞に含まれるものなので衛生的に解体されたものには含まれない。外側をトリミングしてしまえば大丈夫なはずだけど、まあ自己責任で。

鹿肉をステーキにしてみる

ここからは合法。大きく切り分けて普通にスキレットで焼いてみた。

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うん、味はいい。噛みしめるとほんのり漂う鹿肉臭はジビエの証。ワイルドな肉には沖縄のジャッキーステーキハウスのNo.1ソースが合う(疲れた時はお肉に限る―4泊5日沖縄旅行その4 - 鵜の目鷹の目)。

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しかし固い。火が通った部分はゴムのようで、レアで焼いても赤身はゴリゴリしないとナイフの刃が通らない。元々ステーキというのは鹿肉の切り身を焼いたものを指す用語で、だから「ビーフ」のステーキなわけだけど今やビーフがステーキの主役になったのも理解できる。これはちょっと厳しいな。

硬い肉は真空調理に限る

というわけでいつものようにANOVAの力を頼ることに。アクチンを変質させない温度で戦えば勝てるに違いない。

表面にハーブソルトを揉み込んで、スライスしたニンニクともにジップロックにイン。そして最初は低温殺菌のために75℃にセット。今回は肉が大きかったのと、野生の肉なので念のために1時間。これが吉と出るか凶と出るか。その後温度を55℃に下げて丸一日放置したものがこちら。

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もうこの段階で最高に美味い。噛みごたえはあるけれど固くはない。旨味も十分に残っているし、かなりイケている。殺菌時間を減らせばさらに柔らかみが増したかもしれないけれど、それが功を奏してスジの部分がプリプリのコラーゲンに変質していたのがラッキーだった。温度を下げていたら「柔らか/ガチガチ」の組み合わせになっていただろう。それが「噛みごたえがある/プリプリ」になったのなら、ある意味で成功とも言える。プロがお店で出すのならきちんとスジを取ってもっと低い温度で殺菌したほうが質は高くなると思われるけど、素人ならばこれで十分だ。

あとはスキレットで焼き目をつけて完成\(^o^)/

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鹿肉最高でござる。香りも旨味もパーフェクトで、うん、これは生を超えた。安心安全で美味しい。これが料理だよなあ。

鹿肉は難しい

今回鹿肉を大量にもらって普通に焼くのと真空調理の2タイプを試してみたけれど、鹿肉が一般に流通しにくい理由がよくわかった。普通に焼いただけでは固くなってしまいがちだし、解凍して丸一日もたつとドリップが抜け出てスカスカになってしまう。生は最高だけど、食中毒の危険性がつきまとう。

鹿肉の商品化と言えばソーセージだったりハンバーグだったり、ひき肉にしてしまうパターンが多い。それはやっぱり硬さをごまかすためなんだろうけれど、それによって鹿肉の良さがスポイルされてしまっていると感じている。鹿肉を食べた人がよく言っている「思ったほどくさみがない」というのはもしかしたら、ドリップが出て旨味スカスカの、単なるタンパク質を食べていることによる感想なんじゃないだろうか。少なくとも自分は鹿肉ハンバーガーを食べて「鹿肉らしい」とは思わなかった。

不要で捨てられきた鹿がもったいないから、だけど食べにくいからといってそこから「鹿」という属性を取り払って、ただタンパク質を摂取するためだけに食べることに何の意味があるだろうか。例えばワニやカエルを食べても、「鶏肉っぽい」という印象しかないのなら鶏肉を食べておけばいいだけの話であって、わざわざ珍しいものを食べる意味なんて、それを食べたという「情報」を食べているだけに過ぎないと思う。

そういう意味では鹿肉は、真空調理でじわじわと火を通して初めて成立する肉なのではないだろうか。鹿肉らしさを損なわず高める料理法として、これ以外のものは無いのかもしれない。それは流石に言いすぎかもしれないけれど(シャリアピン・ステーキにしても美味かった)、食べにくいと思われていたような肉もAnovaを使うことでその真のポテンシャルを引き出せることは間違いない。来年も積極的に塊肉を攻めていこう。