下北半島一周の旅 ~恐山など恐るるに足らず~

仏ヶ浦から佐井港に戻ってきて、11時には本日の目的地である恐山を目指して出発した。

下北半島大間町むつ市、そして脇野沢を結んだ三角形のような形をしており、佐井村から恐山があるむつ市まで向かうにはおおよそ3パターンの通り方がある。

この中で最短となるのがいったん大間に戻る北回りルート。距離的にはこの中で最長の約70kmもあるので一番早く到着できるというのは意外だけれど、Googleマップは賢いので、国道を通る分平均速度を早く計算しているのだろう。

二番目に早いのが対角線を突っ切るルート、なんだけど実はこれは大きな罠で、青森県道284号線は別名「険道」と呼ばれるほどの悪路であり、車一台がようやっと通れる未舗装路が延々と続く恐ろしい道路だとのこと。

青森県県道284号線

最も時間がかかるのは南回りのコースなんだけど、北回りは帰りに使おうと思っていたのでせっかくなので大回りをして下北半島を一周してしまうことにした。南に行けば仏ヶ浦に行くまでに海から見た願掛岩もゆっくりと見られるし、お昼は『ぬいどう食堂』あたりで食べてもいい。途中には川内湖があるし、道の駅でお土産を買ったりするのも良いな、と考えていた。

そう思って佐井村を出たものの、なんだか様子がおかしい。どんどん山に入っていくし道は険しくなるばかり。すれ違う車もほとんどないし、だけどもナビはむつ市を正しく指している。これはおかしい、もしかしたら例の険道に迷い込んでしまったのかもしれないと戦々恐々としながら運転しているうちに、県道46号線に入ってしまったことに気がついた。284号線よりはだいぶマシだけれど、それでも標高400mクラスの峠を越していかなければならず、舗装はされているものののギリギリ片道一車線、うねうねと曲がりくねって路肩を踏み外すと崖下にまっしぐらというなかなか難易度の高い道だった。湯野川温泉まで出るとそうでもないんだけどね。

本来自分が想定したのはこんなルートで、

道を間違えてうかつにも変なショートカットをしたばかりにいくつも観光地をすっ飛ばしてしまった。おかげで早くむつ市についたんだけどさ。ぐぬぬ

海上自衛隊第25航空隊

ほうほうの体でむつ市にたどり着いた我々を出迎えたのは、海上自衛隊第25航空隊のヘリコプターだった。

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海上自衛隊大湊基地

奥に見える黄色いプロペラ機がちっちゃっこくてかわいい。自家用に欲しくなるレベルだ。そういえばむつ市といえば大湊地方総監部なのだった。時間があれば北洋館を見学したりしてみたかったんだけど、それはまた別の機会に自衛隊だけ見に来よう。航空ショーを見に行くのに、新千歳と三沢とどっちが近いだろうか。

駅前食堂

さて本来は昼前ぐらいに『ぬいどう食堂』で海鮮丼的なものでもキメてやる予定だったのに、それをすっ飛ばして微妙な時間にむつ市に入ってしまったおかげで、空腹だけど行くあてがないという最悪の状況になってしまった。下調べをしていなかったわけじゃないけれど、なんというかこう、この街には旅の途中で寄りたくなるような店が無いというかなんというか。

下北の食材をふんだんに使ったフレンチとかはちょっとピントがズレている。カレー、というのも重そうだったし、チェーン店に行く気はさらさら無かったし、さんざん迷った挙句にグルメサイトで口コミの評価が高い、駅前食堂という店に行ってみることにした。

駅前食堂
ジャンル:食堂・定食
アクセス:JR大湊線下北駅 徒歩1分
住所:〒035-0061 青森県むつ市下北町5-45(地図
周辺のお店:ぐるなびぐるなび むつ市・大間・野辺地×定食・食事処
情報掲載日:2016年10月4日

メニューの種類は豊富で,ラーメンが主力らしいけれど専門は中華なのだろうか。とりあえず看板メニューらしき普通の中華そばと,こってり中華そばを一つずつ注文した。

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普通の中華そばは煮干しの風味がガツンときいてパンチのある味。鶏ガラ&魚介でベーシックに美味い。

特筆すべきはこってりで,濃厚なトンコツスープにもちもちの太麺がベストマッチ。自家製麺のこだわりが生きている。普通のラーメンで普通に美味しいのはいいなあ。地元にあったら通いたくなる良店だった。

惜しむらくはこってりの上の,濃厚煮干しラーメンが売り切れだったこと。その代わりにレジ前で売っていたのをお土産に買って帰って食べてみたんだけど、スープがかなり本格的で良かった。しかし麺はなあ。こればっかりは店で食べるしか無いのが惜しい。

もう一つ残念だったのは下北名物『貝焼き(かやき)』を食べなかったこと。メニューを見つけてどうしようかと思ったんだけどラーメンが食べたかったからパスしたところ,帰り際になって「単品 500円」の文字を見つけてしまった。単品で頼めるのなら注文していたのになあ。

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これは帰りのフェリーターミナルでおみやげとして購入。海産物を味噌で焼いて食べるのだから,広義のちゃんちゃん焼きと言ってもいいかもしれない。卵でとじるところが新しい。

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恐山冷水

満足したところで恐山を目指して再出発。やっと平地に出たと思ったらまだ山だ。下北半島は99%ぐらいが山岳地帯なんじゃないかな。どこへ行くにも山、山、山。狭い山道をこれでもかと登っていると不意に道がひらけた。

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恐山冷水は『冷水を1杯飲めば10年、2杯飲めば20年、3杯飲めば死ぬまで若返る』と言われている名水だとのこと。

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うん。これは冷たくて美味しい。冷水の名に偽りなし。

お茶のペットボトルが空いていたので途中の山道で飲むべく詰めて持って帰ったけど、消毒も殺菌もされていないから本当は微妙らしい。その日のうちに飲むぐらいなら大丈夫なんじゃないかな。

恐山

そういえばここまで言うのを忘れていたけれどこの恐山と函館にある恵山とは姉妹山ということになっている。恵山は活火山なので山肌はむき出し、至る所から硫黄の匂いのする煙を吐き出すそれこそ地獄のような光景なので恐山も似たような光景を想像していたのだけど、ここ恐山へ至るまでの道は深い森に囲まれており、姉妹と言っても全然似てないじゃん、と思いながら登ってきたのだが、たどり着いてみてなるほどと思った。

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恐山とは外輪山にぐるりと囲まれた底の部分であって、森に囲まれた湖の周りの一部分だけが草も生えない不毛の地となっているのだった。緑豊かな森林を抜けたらこの荒れ地では、確かに三途の川を渡ってしまったかと思ってしまっても無理もない。

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入山料を払って山門をくぐれば恐山の菩提寺が姿を現す。地獄に仏とはこのことかな。街なかにあるよりもずっと有り難みが感じられる。

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岩山、というか岩の丘へと登る。もっと険しいかと思っていたけれど、まあ確かに砂利道だけど大変なところは一切ない。

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恐山と言えば風車。

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硫黄の匂いが立ち込めて、ところどころの岩間から煙が吹き出す地獄のような光景を抜けると美しい湖畔が眼前に開ける。

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この非現実感、なかなか悪くない。京都に行ったときに「お寺さんは古代のアミューズメントパークだ」と思ったのだけど、この恐山はまさにそれだ。生と死と、地獄と極楽と仏がいちどきに楽しめる。言ってみれば恵山のほうが、駐車場から頂上までの標高差300mのすべてが地獄絵図で(賽の河原 - 鵜の目鷹の目)、そして登りきった後の270度広がる大パノラマを見ればずっとクライマックス感があるんだけどいかんせん難易度が高すぎる。恐山は観光バスでガッと来てハイキング気分ですべてを味わえるから尊い。

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そういえば沖縄のときといい(アメリカンな日―4泊5日沖縄旅行その10 - 鵜の目鷹の目)、ドキュメント72時間で取り上げられたところに良く行っている気がする。これもまた、聖地巡礼というのかな。

www.nhk-ondemand.jp