すべてのオタクは山田太郎に投票しろという風潮www

第24回参議院議員通常選挙の投票日が今度の日曜日、7月10日に迫っているけれど今回の選挙は取り立てて争点もないので、自民党の圧勝、改憲4党で議席数の3分の2を狙えるところまで伸ばすだろうと予測されている。

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これまで自由民主党に投票したことは一度もないのだけど、経済・外交面ではしっかりしているし、失敗があっても明確なビジョンがあって牽引していく力があるところは評価している。教育関係にも力を入れており、まあ自民党が政権を取っていれば壊滅的な事にはならないだろう。

日本の悲劇としてまともに与党と戦える野党がないというか、共産党を除けば民進党にしても大阪維新にしても、自民党の亜流ぐらいの存在でしかないところが痛い。たとえ民進党が政権を取ったとしても劣化自民党になることは分かってしまったし、逆に言うと野党が自民党の亜流のような政策しか打ち出せないことは、有権者がそれを望んでいること、ひいては日本人が成熟した市民であるとの証左に思える。

客がラーメンを求めている時にチャーハンを出す人はいないだろう。醤油ラーメンか塩ラーメンか味噌ラーメンか、そのぐらいの違いで勝負せざるを得なくなる。今の日本の政治にそれぐらいしか与党と野党に違いが無いことは悲しいけれど、それも国民が望んだ結果だから仕方がない。

投票率がおしなべて低いのは現政権にそれなりに満足していて、もしくは政治によって自分たちの生活が劇的に改善されるようなことはないと諦観しており、さらには日本という国に、国民全員が楽しく遊んで暮らせるようにするための力も余裕もないことを、有権者がきちんと理解している、とも言える。そして残念ながら、たとて改憲したってこのふにゃらけた国民が、明日から急に人を殺せる兵士になれるはずがないことも分かっているのだろう。だから野党の叫びも届かない。

20代の過半数が自民党を支持しているということも、極めて現実的で合理的な判断だと思われる。

オタクは山田太郎に投票しろという風潮www

で、ここからが本題。

山田太郎という、冗談みたいな名前の国会議員がいる。この人は長年マンガ・アニメ・ゲームの著作権問題に取り組んでおり、既存の権利者が著しく有利になるような著作権法を改正して、文化の振興を手助けしていく方向に改正していきたいとしている。

与党でもないただの一議員になにができるかと思って見ていたら、予算委員会の質疑で安倍首相から著作権の侵害の非親告罪化について言質を引き出し、TPPの導入にあたっての著作権法改正案でも、

TPPの合意書では「 原則非親告罪化、例外的に親告罪あり 」だったものを国内法では「 原則親告罪、例外的に非親告罪あり(海賊版) 」

TPPによる日本国内の著作権法の変更について | 前参議院議員 山田太郎 公式webサイト

とさせるなど一定の成果を上げている模様。密室の中でなし崩し的に決まってしまいそうなことを、公の議論の場に引き出したことが功を奏したのかな、と感じた出来事だった。

そのほかにも児童ポルノ非実在児童問題(現実に存在しないマンガやアニメの少女も児童ポルノに当たるのか)に関しても、

児童の売買等に関する児童の権利条約選択議定書第二条(c)は、「児童ポルノ」とは、現実の若しくは擬似のあからさまな性的な行為を行う児童のあらゆる表現(手段のいかんを問わない。)又は主として性的な目的のための児童の身体の性的な部位のあらゆる表現をいうと定義しており、同条(c)に規定される「児童」は、実在する児童であると解され、同条(c)に定義される「児童ポルノ」には、およそ実在しない児童を描写したものは含まれないと解される。

(中略)

我が国は、およそ実在しない児童を描写した児童ポルノについて、サイバー犯罪条約に規定する義務を負うものではない。

TPPによる日本国内の著作権法の変更について | 前参議院議員 山田太郎 公式webサイト

という答弁書を引き出している。

実在の児童のポルノが出まわることは、さらなる被害者を再生産することになるから禁止というのは分かる。だけどそうだからといって拡大解釈し、被害者がどこにも存在しない、少女を描いた絵やアニメまでも規制してしまおうという動きを封じ込めることができた功績は大きい。

例えばいまウナギが絶滅の危機にあって、それとは別に「蒲焼き」が嫌いな勢力がおり、ウナギの代わりにナマズやサンマを蒲焼きにすることまでも「うなぎを食べようとするかもしれないから」と言って禁じようとしていた、というとわかりやすいだろうか。

与党を応援している勢力にはまあそういうモルモン教徒的な、ポルノ全面禁止を目標に活動している団体も含まれているため、「応援するからこれを混ぜてよ」と言われると自民党的にも「まあいいかな」とこっそり混ぜていこうとするわけで、そんな動きを目ざとく見つけて白日にさらすことだけでも一定の効果がある。

その他様々な活動についてはいかに詳しくまとまっている。

nijigenkisei.ldblog.jp

そんなわけでここ最近、すべてのオタクはオタクの守護者であるところの山田太郎に投票すべきという同調圧力があるのだけど、果たしてそれは本当に正しいことなのだろうか。

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一票の重さ

「マンガやアニメも好きだけど、これからの国際社会を生き抜くうえで自由民主党以外に与党となるべき政党はない!」

という主張は分かる。それは結構正しいと思う。

とはいえ、すでに今の時点で自民党の圧勝が決まっている以上、一票減ろうが減るまいがたいした影響はない。特に比例代表選挙では日本全国を一つの選挙区にしているため、一票の価値が低い。自民党は前回、平成25年参院選では1846万票を獲得しており、18人の当選者を得ている。

100万票で1人当選。これが参議院比例代表の相場。

新党改革はヤバい

それに対して山田太郎が属する新党改革の泡沫政党っぷりはヤバい。前々回、平成22年参院選では117万票を獲得して、かろうじて党首の荒井広幸のみが議席を確保した。前回平成25年度は比例代表選挙に候補者を立てていない。

でもって今回はさらに苦戦を強いられるだろう。元々ネーミング以外にパッとしない政党だし、政見放送を見たけど苦笑いしか浮かんでこない(なぜ高樹沙耶比例代表に出さない)。今回は得票数を6年前より2~3割減らして、70万票~80万票といったところが相場だろうと踏んでいる。そうなると獲得議席数は0になる。まあそれが妥当なところだと思うし、マスコミによる大方の予想でもそうなっている。

ところがここに、アニメやマンガやゲームの権利を守ってほしい人たちの50万票*1が加わるとどうなるか。

0が1になる。

意外と勝ち目がある。これは、熱い。

対する自民党は、前回どおりの1,800万票にオタク票50万票が加わったところで誤差にしか過ぎないし、もし50万票減って1議席失ったところで、選挙区で45人以上勝つと予測されているので勝利は固く、オタクが与えた影響もごく僅かにしか過ぎない。

真田丸真田昌幸じゃないけれど、自分を高く売るなら「自分が味方しなければ負ける」勢力に与するのが一番だ。自民党に投票した一票よりも、山田太郎に投票した一票のほうがずっと重く、価値がある。

だからまあ、自民党を応援したいアニメ好きの人は、選挙区で地元の都道府県の自民党候補者に入れて(もちろん共産党でも民進党でも好きなところに入れていい)、比例代表は「山田太郎」と書けばいい。そうすればオタクの力で国会議員を一人、当選させることができる。これは多分、史上初のことだろう。

イギリスのEU離脱投票の時は、面白半分の人が離脱側に投票したせいで大変なことになったというけれど、今回の話はそれとは全くの別で、100:0を99:1にするための投票。仮に山田太郎が当選したところで、経済も外交も教育も国の基本的方針は変わらない。

ただひとつ変わってくるのは、これからの6年間、マンガやアニメ、ゲームの権利が守られやすくなるかどうか、それだけ。

6年間ウォッチしてみよう

山田太郎に投票して、もし当選してみたらその活動を任期の間ウォッチしてみよう。いいことをしていれば次も投票すればいいし、テキトーなことをしていたら次は投票せず、落としてしまえばいい。

誰かに投票すれば当選するかどうかを楽しめるし、その後の任期中は「オレが投票した人間がどんなことをしているか」を知って楽しむことができる。選挙が初めての人はぜひ、党名ではなく個人名を書いて、その後どんなことをしているのか追っかけてみよう。そこから政治が分かってくるだろう。

投票日は7月10日

今年は特に期日前投票の利用者数が増えてきているので、これを書いた時点ですでに投票しているひとが多いと思う。それでも少しだけでも、山田太郎に投票してみたいなと思う人が増えたらいいなと思って書いてみた。

山田太郎が6年前の選挙に出た時の個人の得票数は約3万票。ここから伸びた分がオタクが彼に投票した数だと思って、当日は(というか結果が出るのは翌月曜日だけど)楽しみに見てみたいと思っている。

*1:コミケの参加者数は50万人。3日累計の数字だからこれを3で割って3をかけてオタク票を推定してみた