2013イギリス・イタリア旅行 ~その4~ 大英帝国の威信を思い知る

ベイカーストリートを後にした我々は、地下鉄でキングス・クロス駅へと向かいました。ここはハリー・ポッターファンならだれでも知っている、ホグワーツ魔法学校へとつながるホームがあることで有名ですが、自分はそこまで思い入れがないので華麗にスルーw 乗り換えてラッセルスクエア駅まで乗継しました。
 
一度ホテルに戻って20ポンドをデポジットしてドライヤーを借り(ハウスキーパーがいる昼間しか借りれない)、大量に仕入れたホームズグッズを置いて、ラッセルスクエアに向かいます。
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ここはドラマSHERLOCKの冒頭で、ワトソンくんが「ルームシェアしなよ!」と勧められるシーンで使われた公園です。家に帰ってから「あっちの方のベンチだったか!」と気がついたけど時すでに遅し。とはいえ、お昼なので沢山の人がベンチに座ってご飯を食べたり本を読んだりだったので、あそこも誰かが使っていたことでしょう。
噴水で鳩が水浴びをしたり、リスが通行人に餌をねだったりと、都会の中のオアシスのような場所でした。
 
交差点で信号を待っていると、おじいさんに声をかけられました。
「君たち日本人かい? ぼくは日本が大好きなんだ。ホンダの車に乗ってるんだよ」
などと英語で話しかけられます。観光客の写真を撮って郵送する商売をしているような雰囲気でした。悪い人ではなさそうだったけど警戒するに越したことはないのでノーサンキューと曖昧に笑ってその場を去りました。このデジカメ時代にそんな商売が成り立つのかなあ。謎だ。
 

大英博物館

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いよいよ旅のメイン、大英博物館にやってきました。北側からも入場できるのですが、この正門を見たくてわざわざ正面に回ってきたというw
大英帝国の繁栄の証を見せつけるために入場は無料! その代わり玄関ホールには寄付を募るガラス張りのドームがあって、いろんな国の紙幣や貨幣がぎっしりと詰まっていました。
自分は多分どっさりとおみやげを買うことを予想していたので寄付はパス。それと、5ポンド払ってオーディオガイドを借りました。グレートコート左側に貸出カウンターがあるので、運転免許証を預けてガイドを借ります。2人分借りるのでも、1人の身分証明書で大丈夫でした。
 

見学の手順

大英博物館は膨大に広いため、漠然と見ていると何日かけてもお目当ての物に行き着くことができないとの評判で、イギリス観光で最も悔いを残す場所として知られています(^_^;)
そのため急いで入場することはせず、グレートコートのカフェで飲み物とバゲットを買って腹ごしらえをしながら作戦会議を行いました。
 
幸いにも今日は金曜日なので、開館時間が通常の17時30分から20時に大幅に延長されます。
そこで、事前にNHKの「2時間で回る大英博物館」という番組や、公式ページにあった「時間別見学ガイド」も用意していたのですが、とにかく全部見るぞ!と作戦を変更しました。
最初に1階の左翼を攻めてお昼休憩、次に2階のエジプト以外を回ってから17時30分の普通の閉館時間前におみやげ屋さんをチェック、最後にミイラ関係を見て終了、ということになりました。延長時間には一部閉館してしまうと書いてあったけど、エジプト関係は目玉商品なので最後まで見学できるようです。
 
結論から言うと、12時過ぎから20時まで約8時間滞在したにも関わらず、全部を見ることは不可能でした。そのため日本韓国中国のアジア館はパス。地下のアフリカ館もパス。だけどその他の展示はわりとしっかり見学することができたので、本気で見ようとするならば丸一日かけないと無理だなと実感しました。
正直な感想として、2時間では何一つ見ていないのと一緒になりそうです。なんにも目をくれずに駆け足で通りすぎてようやく2時間、そのぐらいの分量の展示があります。
そういう意味では大英博物館を見学するなら金曜日がベスト。午前中を他の予定に使えるのが大きいです。8時間見て回ったあとではなにか他のことをしようという気にはまったくなれないので、長期滞在でない限りここは一日の最後のイベントにするのが良さそうです。
 

前半戦スタート

1階は大物展示がメインなので、まずは度肝を抜かれます。
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注目のロゼッタストーンは混んでいるのと、アクリルで囲まれているので貴重さはわかるけれど面白さとしてはまあまあかな。
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ロケットパンチしているみたいな仏像。神殿や石像も凄いけれど大きい物はやはり大味な印象です。その中で自分がいちばん気に入ったのがライオン狩りの壁画でした。
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人間たちはいかにもエジプト式に機械的に描かれているのに対し、ライオンたちの躍動する筋肉と表情が見事でした。
 

アステカ文明の異質っぷりに感動

人間の頭蓋骨に翡翠を貼って作られたモザイクのマスクに衝撃を受けます。うはー、文化が違う。独自の進化を遂げるととんでもないことになるね。ディスプレイの分かってる感がイイ!
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こちらがテスカトリポカで、
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こちらがケツアルカトルかな。
 

ついに出会えたウル王朝のゲーム

そしてメソポタミア文明のウル王朝です。
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憧れていたウル王朝のゲーム、The Royal game of Urの実物を見ることができて感激しました。これは紀元前2600年頃のボードゲームとのことで、ゲームが人間の文明とともに発生したことに感心します。
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ウルのスタンダード(用途は謎)とウルの山羊(用途は謎)。ラピスラズリの青が魅力的。金と青の組み合わせがいいなあ。アステカ文明よりもかなり我々よりのセンスです。
 

アフタヌーンティー

そうこうしているうちに15時になったので、グレートコート2階のレストランに向かいました。大英博物館で本場のアフタヌーンティーです。
しかし一人20ポンドは高い。値段はいいけどボリュームが多い。本当は2人でシェアしたかったけど、そーゆーのはマナー違反らしいです。周りの人も一人一つ注文しているようなので、我々も二人分注文しました。
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サンドイッチが独特で美味しい。具材がいかにもイギリス風で、スモークサーモンだったり、チキンのカレー風味だったりといろんな味を楽しめます。
スコーンは日本で食べるのと一緒ですね。これは工夫の余地がない。クロテッドクリームも国産の中沢のものよりもこってりとしていますが、味的には一緒。中沢もなかなか健闘しています。

中沢クロテッド 100g

中沢クロテッド 100g

1つずつジャムの小瓶がついてくるので、1個はお持ち帰りにしました。
ケーキは甘さ控えめで日本人好みです。しかしこのボリュームを昼ごはんの少し後に食べるとか、イギリス人の胃袋は途轍もないな!
 

おみやげ屋さん

グレートコート中央部の塔の1階部分はおみやげ屋さんになっていて、ここでは食べ物やちょっとしたグッズ的なおみやげが売られています。
また、右翼側にはレプリカを中心とした高級品の売店もあり、どちらも見て回るだけでかなりの時間を要します。見学する時間があまり取れないなら、ロゼッタストーンだけ見てあとはおみやげ屋さんを見ていたほうが有意義な気がします。
 
ホームズ博物館と同様に小物のセンスが良くて、色々と細々したものを購入してしまいます。剣闘士フィギュア4体セットとか光り輝くロゼッタストーンのマグネットなどなど。ツタンカーメンのアヒルも迷わずゲット。
 
しかし本命はやはりレプリカの売店の方で、もちろんものすごくいいお値段なんですが品物もかなりぐっとくるものばかりで、かなり頭を悩ませました。自分は「ウル王朝のゲーム」が好きなのでぜひ買いたいと思っていて、商品もかなりのクオリティなのですが持って帰ると重そうなので断念したのですが、結局諦めきれなくて帰国してから通販で購入することにしました。
Home at British Museum shop online
大英博物館の直販なので安心です。アンケートに答えると10%オフになるという太っ腹さが嬉しい。
 

後半戦も頑張る

ご飯を食べて体力がだいぶ回復したので、膝が甚くなってきたことは気にせず後半戦スタート。
2階に上がって古代ローマや、地中海文明の作品を見学。古代エジプトの影響を受けつつも、オリジナリティを盛り込んで自分たちなりの面白さを盛り込んでいるところがユニークで、楽しい展示ばかりでした。
 
つくづく凄いなと思ったのが人形です。
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可動式フィギュアは紀元前からあったのか! 演劇のワンシーンを人形にしたものとかは、観劇のあとにおみやげとして買って帰ったのかなあ、とか。これは今流行のヴィネットじゃないですか。青銅の人形は鋳造なので、原型を作って雄型雌型を作って複製したり、現在とやってることは全然変わらない。
多少の差異はあれども、人間としての進化は2000年ぐらい前に終わっていて、昔から全く同じようなことをやっているんだなとちょっと虚無的なことを考えました。
 
地味に楽しみにしていたのが機械式時計の展示。
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機械だけが古代と現代を分ける分水嶺なんだなあ。
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これも時計。
 
締めはミイラ。飼い主が死ぬときは飼い猫のミイラも一緒に埋葬。
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「ミイラにされちゃったニャア」と困った顔。
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犬(アヌビスです)は「ご主人様に悪霊を寄せ付けないワン」とキリッとしている。
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こちらの古代エジプトの壁画も良かったです。普通はみんな横向きで記号のようなのに、この絵では踊り子たちがセクシーに活き活きと描かれています。女の子が真正面を向いているのがスキャンダラスなのだとか。脳科学の茂木さんによると真正面から見られると人はドキッとしてしまうと言っていたなあ。
 
古代エジプトの遺跡はどれも精巧で素晴らしい出来なのですが、面白味に欠ける印象もありました。それはきっと美しさよりも、神の定めた教義に100%基づいた正確性を重視しているからなのかなと考えました。象形文字にしても、あれほどの複雑な文字をまるでハンコで押したように正確に石に刻み込むなんて、並の神経ではできません。ロゼッタストーンを見つけた考古学者たちがあれを表意文字だと思ったのも当然でしょう。単なるアルファベット、表音記号にあそこまでの複雑さを要求するのは、神の教えという絶対的な規則があるからなのかもしれません。
エジプト本体から離れていくにつれて、様式はエジプト風でも、徐々に作意を帯びていくのを見るのは楽しかったです。こうしたらもっと可愛いんじゃないかとか、もっと人気が出るスタイルにしてやろうとか、神の手を離れたところから面白さが生まれてくるのだと感じました。
 
最後のお土産チェックをして20時! 長かった大英博物館マラソンもここでしゅ~りょ~。面白かった!
オーディオガイドは無くても良いかもしれません。聞きたいものは収録されてなかったりだし、集中して聞いていると時間がなくなるし、ほとんどBGM代わりでした。日本語版のガイドブックを買って帰国してからおさらいすれば、その場では見学に集中するだけで良さそうです。
 

夕飯はパブで

見学を終えて、大英博物館のすぐ向かいにあるミュージアム・タヴァーンで夕飯を食べようと思ったら満員で座れそうにありませんでした。事前にあたりをつけていた店もだいたいが満員で、ラッセルスクエア通りに面しているNight&Dayというパブに入りました。

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イギリスのパブといえばフィッシュアンドチップスとエールです。
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1人前でこの量。一皿で十分です。
油っこいと聞いていたフィッシュフライは、衣サクサク身はしっとりで全然そんなことはなく美味しいです。下味がついてないのでタルタルソースを始め、いろんな調味料を試してみる楽しみもあります。
ぬるくて苦くないビールだという評判のエールも、意外とキリッと冷えていて揚げ物に合います。大英博物館はともかくとして、朝と晩は美味いと評判の店ではなく、地元の人が普通に使っている店に入って普通に美味しいものが出てくるので、イギリス料理が美味しく無いというのは、少なくとも現代のロンドンでは誤りなのだと分かりました。
 
一杯目のエールを飲み終えてお代わりをもらおうとレジに行き、銘柄を見ても分からないのでメニューの一番上*1にある「ストロングボウ」というのを半パイント注文しました。さっき頼んだのが飲みやすかったので、今度はストロングなやつを!と思ったのです。
テーブルに戻って一口飲んでビックリ。リンゴの味がする・・・!*2 ベルギービールによくある果物風味とかそんな生易しいものじゃなく、ビールっぽいけどリンゴ味。嫌いじゃないけどなんだこれは!?と早速ググります。

ストロングボウ・サイダー (瓶) 24本入 1ケース

ストロングボウ・サイダー (瓶) 24本入 1ケース

すると出てきたのがこの商品。リンゴを発酵させて作られたいわゆるシードル、英語でサイダーという奴です。こちらではパブでエールやビールに並んで一般的に飲まれているお酒で、その中でもストロングボウは一番ポピュラーな銘柄だそうです。このボウってもしかしたらウィリアム・テル的な奴なのかな?
 
というわけでイギリス2日目は無事終了。疲れたけれど、寝てる時間以外は120%観光できて大満足でした。

*1:分からない時は一番上を頼むのがセオリー

*2:セオリーに従うとだいたい痛い目にあう。なぜだ!