はじめてのヨーロッパ 〜ガウディとダリを訪ねて〜 Part2

バルセロナにたどり着いたのは夜7時。
時差が8時間あるから日本時間は翌日の午前3時で出発したのがお昼の12時だから、スペインまでの所要時間は合計15時間!
ヨーロッパは遠いなあ。航空運賃は安いけど、時間の壁はまだ健在だ。
 
スキポール空港で入国手続きは済んでいるのでここでの手続きは特になし。ヨーロッパはいいねえ。半透明の緑色のプラスチックで彩られたバルセロナ空港を出てタクシーを捕まえる。さあ、豪華ディナーだ!
 

Comerc, 24


ガイドブックによると、バルセロナには最新の科学を用いた「ガストロノミー」という料理を出すお店が多いそうな。その中から「コメルス24」というレストランに予約を入れていた。ミシュランで★1つをとっていて、シェフは「世界で一番予約をとるのが難しい」お店の出身だそうな。
ミシュランで期待に胸が高まる中、タクシーはお店の前に到着した。空港から市内までは30ユーロ。3〜40分程度だった。
 

嫌な予感

店の中に入って名乗ると、「オープンは20時30分だから外をぐるっとまわって時間を潰してこい」という。おいおい。5分くらい中で待たせろよ、と思うが仕方なく外へ(-_-;)
入る時に店の前に立っていたカップルも同様か。土地勘もなく、スーツケースも持っているので歩きまわるわけにもいかず、そのままオープンするのを待っていた。なんだかなー。
 

言われるがままに

店に入って従業員にコートと荷物を預け、席へと案内される。グラスに炭酸水を注がれたけど、このグラスは来る前からテーブルに置きっぱなしのもの。飲んでいいものなのか迷う。後からきたお客さんが飲んでいるのを確認してようやく口にすることができた。やれやれ。
食器をテーブルに置きっぱなしなのはヨーロッパではよくあるとわかったけど、グラスはなあ。衛生的にどないなもんじゃい、と思ってしまう。
 
続いて注文を取りに来る。ウェイターが、オススメはコースだが、フェスティバルコースと、グランドフェスティバルコースがあり、グランドな方は本当に素晴らしく、このテーブルとシェフは直結していて思いのままだ、みたいなことを熱弁する。5分待ってやるからよく考えておいてくれ! と言って立ち去ったが、キッチンと意思の疎通なんて無理があるだろう、とは思ったけど、デザートが5品出るというのに反応しているのでグレートな方にした。
ちなみに意思の疎通に関しては、ウェイターから
「英語とスペイン語どっちがいい?」
と聞かれて英語で話していたのだけど、彼も英語力に無理があったのか次第にスペイン語混じりになって料理の説明も聞き取れなくなり、キッチンうんぬんよりも目の前の彼との疎通が図れなかったことをいい添えておきたいm(__)m
 

そして豪華?ディナー

ぼんやりと待っているとパンを持ってくる。3種類のパンから好きなのをひとつ選ぶらしい。カタルーニャ地方伝統だという丸くて美味しそうなのを選んだが、なんだか焦げ臭い味だった。

そしてオリーブオイルを4種類持ってくる。普通なら戸惑うところだけど、事前にオリーブオイルの食べ比べがあるというのを知っていたので余裕の態度。パンにつけて食べると確かにオイルによって風味は違うけど、それでなにか?と思う。油だけでパンを食べても美味しいものじゃないしね・・・(´・ω・`) 適当な所で「もう満足か?」といって下げられるし、どうにも意味のわからないところ。
 
最初はやたらしょっぱいカリフラワースープと、冷たいカリフラワーが出てきた。これは美味しいの? スープはそのまま飲むにはしょっぱいけれど、カリフラワーは2個だけ。浸して食べてもソースじゃないからあまり意味がない感じ。ちょっと困惑。
続けて出てきた白身魚の刺身と黒ごまソース和えを食べて、美味しくないぞ!と電撃のように思った。どうしてこんな組み合わせになるんだろう。
ピザは煎餅みたいで、それを無理やりピザカッターで割って、というか砕いて盛ってよこす。雑。
グリコの「コロン」みたいな食べ物は中のクリームがしょっぱすぎなければ美味しかったなあ。
 
料理が期待したレベルじゃないので、ここらへんで「気取っていてもしょうがないな」と思って写真を撮りはじめた。

続いて出てきた生牡蠣はドライアイスによる演出。おおー!と思ったけど、全然冷えてなくてがっかり。見た目で裏切る、というか見た目に騙された。
エビのワインビネガーシャーベット添えは酸っぱすぎて如何ともしがたった。
 

スープにはちょっと期待。クローズアップ現代で紹介されていた、スープの中にスープが入った新しい味!
のはずがどうなんだろう。外のスープは昆布のだし、中のスープはカツオのダシなんだけど、どちらもわざとらしいぐらいに濃くて、ダシとして失敗の部類。厨房に行って出汁のひき方を教えてやりたくなるレベル。飛行機の中で北大路魯山人の「出汁のとり方」を読んでいたのでなおのことだ。
 

出た!しめ鯖!! 鯖の食感とフレークのサクサク感が凄まじいまでのミスマッチ感を漂わせる・・・。これなら機内食で食べた奴のほうが美味しかったぜ。
 

マグロのカルパッチョはイクラと卵の黄身のモッタリ三重奏。もっと、こう、アクセントを:(;゙゚'ω゚'):
 

イカとミカンの炒めものはまあまあ。居酒屋で出たら普通に食べるね。味が濃すぎるのでご飯食べたくなった。
 

これは唯一美味しかった、卵とトリュフ。味は異常に濃すぎるけどトリュフはとことん美味しい! 料理の腕がどうこうじゃなく、トリュフが美味しい!!
 

とてもとてもさみしいパエリア。パエリアは米に芯まで火を通さないことはわかるけど、昨日のチャーハンをレンジで温め直したような気分になれる。せめて熱々で食べたかった。
 

この泡は、出た!スプモーニ!! 期待して食べるも、口の中でシュワシュワと溶けて消えるだけのただの泡。お刺身を食べるには味が足りず、霞を食べたような気持ちになれること請け合い。
 

お肉〜。ワインの味がうるさいけどまあまあ食べられる。大根のサイコロはとぼけたような味。
 

デザートはなんだか色々出たけど忘れた。甘いばっかりで美味しくないし。もう食べ疲れたよ。途中から早く帰って寝たいと思っていた。
 

結論

これが新しい味なのかどうか分らないけれど、とにかく一貫して突飛な味のものばかり食べさせられて疲れた。酸っぱいかしょっぱいかばかりなんだもの。さらに良くないのは全般的に料理がぬるいこと。温かい冷たいを感じることも味覚の一部だと思うんだけどね。見た目は面白いけれど、味覚に関しては非常にいまいち。ガストロノミーなんてこんなものか、と思った。
そもそもエセ和食で創作を気取るのが浅いよね。日本食を知らない外人にこういうのを食べさせて「どうです?新しいでしょう!」とドヤ顔をしているようじゃ、テキサスロックンロールスシで出るというブルーベリージャム巻寿司とレベルは変わらない。
ミシュランは凄いでござるとか言うけれど、そんなものは全然信用ならないことがよく分かった。同じぐらいの価格帯でも、先日食べた「天ぷら田ざわ」の方がずっと料理として洗練されていた。こーゆー目新しいだけの料理を肩書きで美味しがっているようじゃ人としてダメだ。
 

とんでもない料金

やれやれようやく終わった、とチェックを頼んで、出てきた領収書を見て思わずコーヒーを吹き出すところだった。
最初に出てきたパンとオリーブオイルは一人8ユーロ、黙っていても注がれる炭酸水で4ユーロ、食後のコーヒーまで別料金で3ユーロ。コースで高い金取っておいてこれかよ! ケチくさいなあもう。
店はお客さんでいっぱいだったけど、儲かってないのかなあ。必死でグレートなコースを勧めていたし、派手に見えて経営は苦しいのかもな。帰国したらレビューで徹底的にこき下ろしてやろうと心に決め、店を出ることにした。
 

まだまだトラブルは続く

タクシーを呼んでもらって(さすがに電話代は請求されなかったw)、出ようとするとコートがない。店員が探しているが出てこない。おい!一流レストランじゃないのここ!?
いくら探しても出てこない。すると、途方にくれたウェイターを脇に押しのけて、ちょっと偉そうな男が出てきてこう言った。
「我々はきちんと管理していたのだが、誰かがあなたのコートを持っていったようで、あなたのコートがどこにいったのか分からない。アイムソーリー
はあ!?( ´゚д゚`)
「アイムソーリーで済ませてんじゃねえよ、オレはお・ま・え・た・ち・にコートを預けたんだぞ! どっかに行った、じゃなくて、ユーがロストしたんだろ! ふざけんな!
日本語混じりに怒鳴りつけると急に彼の態度は変わって、
「オーケー、ユーのお怒りはごもっともだ」
と言った。何を言い出すかと思って聞いていると、こう続けた。
「我々にはふたつのオプションがある。一つには持っていった誰かが返しにきたら、それを受け取って君に返すことだ」
こっちは旅行中で、そんなの悠長に待ってる場合じゃない。もうひとつは?
「もう一つは君のコートの代金を支払うことだ。だいたいいくらだったのか教えてくれないか?」
それを聞いて僕はため息をついた。
選択肢はそれしかないか。幸いバルセロナは暖かいし、あれも1年着ているし、ここで買い換えるのも悪くない。
「分かった。200ユーロだよ」
ところがそれを聞いて顔色が変わる。口がワーオの形になる。いやいや、コートは普通もっと高いから! ここは驚くところじゃないから!
彼は慌てた様子でどこかに電話をかけ始めた。そして、何度かやり取りをした後に我々のもとに戻ってきて、自信ありげにこう言った。
「私たちは予約を受ける時に相手のホテルの番号を控えておくのだ。君たちの前に帰ったお客は一組しかいなかったため、幸いにして捕まえることができた。間違って持っていったというので、私がこれからモーターサイクルでそれを受け取って、君たちのホテルまで届けよう。必ず届けるから、トラストミー」えーーーーー(゜_゜)
いや、まあいいけどさ、いちいち怒らないとそのオプションは出てこないの? めんどくさかっただけちゃうの? 文句言わなかったらテヘペロで済ますつもりだったでしょ? ドヤ顔でいう立場じゃないでしょ?
突っ込みどころは多々あれど、ノーといえない日本人では泣き寝入るしかない状況だった。危ねえ。やっぱりあれだ、ガイジンにはガツンと言ってやらなきゃダメだ。
 
ホテルに帰ってしばらくすると彼は約束通り届けてくれて、がっちり握手して「よい旅を!」と言って去っていったけど、彼を見送りながら心に浮かんだ言葉は、
「なんだかなあ」
だった。味がど〜しょ〜もない店は、サービスの面でもヒドイという事実。このヒドさ、まさにワールド級。死ぬまで語り継げるわ。
到着早々すごい目にあったけど、事故やら泥棒やらの類でもなければ、なにか自分に落ち度があったわけでもなくて良かった。まあ、強いていうなら、コメルシ24を選んだ自分が悪いのだけど。
ぐったりと疲れてベッドに入る。サグラダ・ファミリアに行くため早起きしなければならない。今日で厄を払い落として、明日からはノートラブルでお願いしたいぜ。とほほ。