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読んでないようで読んでいる

余計なことを考えたくないときには読書に限る。これ以上先に何も無いのだとわかってしまって絶望している時は特に良いよね。

天地明察


時代小説で歴代ナンバーワンの面白さだった。本屋大賞1位も文句なしの一冊。
主人公が碁打ちというのが感情移入しやすいのかもしれない。宮本武蔵だって坂の上の雲だって面白いけれど、所詮自分は剣豪でもなければ豪商でも無いし、剣豪やら豪商に対するあこがれよりも棋士に対するあこがれの方が強いから当然といえば当然かもしれない。
例えば武士を見て、今の世のサラリーマンに置き換えて読むってのはかなり屈折した読み方だと思うんですよ。世の中にはそういう人が多いみたいだけど。それに比べると学問への熱い想いみたいなのはいつの時代も共通なので、時代物という意識をせずにぐいぐいと読めた。井上靖の『敦煌』に並ぶ傑作と言っても過言ではないんじゃなかろうか。
とにかく文章が素直で、安井算哲の知的興奮がダイレクトにこちら側に伝わってきて良かった。まさに『勇気百倍』をもらった気分で、読後は意気揚々たる気分になった。われながら単純だなあ。

光の帝国


何度でも言おう! 短編はいい! 短編こそ至宝!
という感じの短編集。あとがきで作者が、「最初の短編の家族の一人ひとりを主人公にすれば良かった」と述懐していた。それはそれで良い作品になったとは思うけど、もしそうだったらこれほどの贅沢な作品集にはならなかっただろうと考えるとしみじみとしてしまうのです。
シリーズものになっているのでちょくちょく読んでいきたい。

時雨の記


いやあもう困っちゃうね。こんなに面白い本を続けて読んじゃっていいんだろうかと思ってしまうぐらいすごく良かった。中里恒子ってはじめて聞くけどやたらに面白いな、と思ってぐぐってみたら芥川賞作家だったというオチ。おみそれしました。
なんといっても文体が素晴らしい。壬生と多江、ふたりの男女の心情が交互に語られていく様は、波間を漂う船のようにゆったりとしていて焦るところがなく、それでいて情感に満ち満ちている。あと30年ぐらい年をとっても見ても良いのかもなと思ってしまう。

あまりに良かったので、何度も手にとって読み返したくなるだろうと思ってAmazonで注文した。第七官界彷徨と一緒に素敵本の棚に並べておこう。
はてな年間100冊読書クラブ 268/303)