映画3本

休みの日は時間があるので、だらだら過ごすぐらいだったら腰をすえて映画を見るべきなんじゃないかと思い始めている。先週見たのは「秒速五センチメートル」と「耳をすませば」。どちらもモチーフは似ているのだけど、感想が180度違っていて面白かった。

秒速五センチメートル


第一章だけ見たことがあるんだけど、その段階で「うへえ」と思って見ることをやめたという話を友達にしたら、全部見てその感想ならわかるけど第一章でそれはない!と断言されたので見直してみたけど、やっぱり同じ感想でした。なんつーか、自分が大好きなんだなこいつ、っていう印象。
中学に入ってから半年間もなにもしないでいて、その子から手紙が来たら文通に付き合って、さて自分が転校するとなったら会いに行こうと思い立ったりとか、主人公の行動に主体性がない。自分で動こうともしないでうじうじ思い悩んでいて嫌な感じ。そのわりに現実世界では部活でエンジョイしてるのがムカつく。でもって、無計画に会いに行ったら明里が待っててくれてチューしちゃったり廃屋の中で毛布に包まれて一夜を過ごすとか、どんなご都合主義かと。
ここで投げ出してしまっては元も子もないので第二章を見ればさらに自己愛が強まっていて死にそうになる。メールでやりとりですか、現代風だねえと思ってたら書いては消しているとか! アホか! アホか! 第一章はなんだったんだ!
満身創痍になりながらも第三章を見れば、なんかOLと付き合ってるしさあ。じゃあ第二章はなんだったんだよ。もう。
自分の気持ちに正直になりたいから仕事もやめますとか、とことんまで自己愛が強すぎて気持ち悪い。なんでもうちょっと先のこととか考えないのかなあ。こいつの思考速度が秒速五センチメートルだっていうオチ? 時速0.18kmって遅すぎだから! かたつむりか!? 本当に好きならダッシュしろよ!
 
まあなんというか、このアニメが鬱アニメと呼ばれる所以がわかったわ。うじうじと自分の内面世界にひきこもって「でもそんな自分が好き」みたいに言ってるいい年をした大人の男を見ると本当に憂鬱になるもんな。うへえ。
 

耳をすませば


そんな精神状態のまま、負けず劣らず鬱アニメだという評判の「耳をすませば」を見たんだけど,こっちは全然そんなことは無かったぜ! 要所要所でツボを突かれてじたばたしたから、10年前に見てたら憤死していたかも知れないけど。

図書カード

ツボその1はこれ。自分が読む本読む本先に読んでいる人って気になるじゃないですか。ましてやそれが異性で、その人に実際に会ったときのドキドキ感といったら筆舌に尽くし難い。
自分の場合は中学校の時だったな。意味が分からないままにかたっぱしから読み干していった当時、ときおり見かける人の名前にどんな人なのか思いを馳せてみたり、実際にあってみると何も話ができなかったり、いろいろと思い出してニヨニヨした。良いぞ良いぞ。
twitterでもやりとりしたけど、今は全部機械が管理してるから図書カードという文化はないんだよねえ。今の若者がああいう甘酸っぱい気持ちを味わえないのかと思うとかわいそうでならないです。

そのタイミングでそれはない!

第二のツボは、神社での雫と杉村(野球少年)との会話。
友達が原田夕子に送ったラブレターの返事を、杉村が催促したことが無神経だと非難する雫に対して、なんで原田が怒っているのか全然分からない杉村。ここからのやりとりが最高だった。

「夕子は杉村のことが好きなのよ」
「そんなこと言われても、おれ困るよ」
「なんで困ることがあるのよ」

「やめろ杉村、このタイミングは駄目だ! やめるんだ!」というこちらの叫びもむなしく、

「だっておれ、月島のことが好きなんだ」

と言ってしまう。あ〜あ、もうダメだ。
「あんたのこと、そういうふうに思ったこと無かった」と傷ついた表情で言う雫を引き止めて「ずっと友達なのか? これからもずっとなのか?」と聞き返す杉村と、無言でうなづく雫。くぅぅぅぅ〜、泣ける。
いや杉村、ナイスファイトだったよ。良いガッツを見せてくれた。1回くらい駄目だったぐらいでなんだ。お前ならすぐに立ち直ることができるさ、と心のなかでエールを送った。
 

比べたらダメだと思うんだけど

ここから先のストーリーは蛇足みたいなものなんだけど(爆)、なんかほんとしみじみと見ちゃうね。青春だね。
天沢も最初はいけ好かないやつだと思ってたら、実は前から雫のことが気になってたとか、窓の前で念じてたら本当に出てきたから奇跡だ、みたいなかわいいこと言ってて、普通にいい奴じゃんって思い直したし。
 
さっき見た『秒速五センチメートル』と比べると、全くの似て非なるものだった。
耳すまのふたりはきっと、イタリアと日本っていう鹿児島栃木間より遥かに遠い距離をものともしないと思うのよ。マメに文通するだろうし、電話もするだろうし、雫が高校生になったらイタリアに遊びにいくためにバイトを始めたりすると思うんだ。
それに比べると貴樹の野郎はどうかと。遠くにいる人の事を想っている自分像が好きなだけで。結局こいつは明里のことが好きじゃないんだよな。だから誰にも明里のことが好きだって言わない。自分の中だけでうじうじと持ち続けていて、どこにも踏み出さない。
 
両方とも鬱アニメと言われているけれど、耳すまはちょっと分かる気がした。10年前に見てたら自分もどうなっていたか分からないし(笑)
だけど5cmはイライラするばかりで全く共感できなかった。いやまあ映像もいいし、山崎まさよしもいいんだけどね。結局のところ「好きだという気持ちがどれほど大きくても、動き出さなきゃ何も始まらない」わけじゃないですか。多分世の中には「動き出す人」と「動き出さない人」がいて、前者は耳すまに、後者は5cmに共感できるんだろうなあ。
 
総括すると、二つのアニメの中で最高にかっこよかったのは杉村くんってことでいいんじゃないでしょうか。それだけにあのEDは良かったなあ。よく分かってらっしゃる。
 

サマーウォーズ


昨日はサマーウォーズを借りてきた。劇場でも見たんだけど、この2本を見たらなんか無性に見たくなって。
恋愛ものとして先の2本と比べると、夏希先輩のキャラが「枠にはまっている」感じが否めない。内気な主人公をぐいぐい引っ張っていく美少女で、突拍子も無い大胆な行動をとってみるかと思うと涙もろかったりと、テンプレート通り。
そういう意味では薄いけど、やっぱり今作の見所は「家族愛」だもんな。2回見て2回とも同じ場所で泣いた。ばーちゃんネタは反則だぜ。
細かい部分で突っ込みどころがいろいろあるけど、それを差し置いて良い映画だったなあ。とにかく絵が良かった。夏だよ夏。ばーちゃんの遺書を読み上げるシーンでの、入道雲がもくもくと大きくなる様子は最高だった。そういえば、あんな風に空を見上げていることも無くなってしまったなあ、なんてノスタルジックな気分になってしまった。
 
今年の夏はそんな余裕があるかなあ。去年は丸ごとふっとんじゃったから、今年はちょっとだけでも夏を楽しみたいよ。