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お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記)

癒されたー!

こういう事を書くとヘンタイっぽいんだけど、多分自分はこの作者に恋しちゃってるんだろうなあと、毎度作品を読み終わる度に思うのです。
文章にいちいちうなづきながら読み進めるだけじゃなくって、行間から伝わってくる驚きとかくすくす笑いのような感情にまで歩調を合わせながら読んじゃう。いいよねえブンガク青年。「空想の長門有希より実在の桜庭一樹」とは僕が今考えた言葉だけど、もしどんな職業にでも就けるとしたら、彼女が読み終わった本の感想を、毎日ふむふむとうなづきながら聞く仕事に就きたいと半ば本気で考えています。
 
はてな年間100冊読書クラブ 246/229)
 

桜庭一樹とわたし

というわけでここからは桜庭一樹に対する想いとか個人的な情念をぶちまける感じになるので、苦手な方はご退出願います。
 

少女七竈と七人のかわいそうな大人


ぼくが最初に読んだ桜庭一樹の本がこの「少女七竈と七人のかわいそうな大人」だ。
今となってはなぜこの本を手にとったのかわからないけれど、物語の序盤からぶっとばされて衝撃を受けたことを覚えている。主人公の母親は平凡な顔をした平凡な女だったが、25歳のときに突然、
「辻斬りのように男遊びをしたい」
と決意をして、1ヶ月の間に7人の男に抱かれて主人公の七竈を身篭るのだ。
この、「辻斬りのように」のくだりに文字通り叩き斬られた。斬られた理由は、それが自分の願望そのままだったから。
さかのぼると中学生のころまで戻ってしまうのだが、卒業アルバムにのせるためのアンケートで「もし異性に生まれ変わるとしたらどうしたいか?」みたいなことが書かかれていた。その時自分は「思いつかない」というなんのひねりも無い答えを書いたのだが、本当は「とびっきり淫乱な美女になってかたっぱしから男に抱かれてみたい」と思っていたのだ。なんだこのヘンタイ中学生は。村上龍の「イビサ」でも読んだのか。バカめバカめ。
 

私の男


続いて直木賞受賞作の『私の男』。家族を失った主人公が叔父のもとに引き取られ暮らすうちに愛しあうようになるのだが、実はその叔父は実の父でという、ぶっちゃけちゃうと近親相姦ものなんだけど、作品の根底を流れている「世界中が敵だらけでも、二人でひとつになって生きていく」という雰囲気がたまらない。タロットカードでいうならペンタクルスの5のイメージ。世間から迫害され逃げるように去らなければならない時でも、親子でもあり恋人同士でもある二人を結ぶ絆は何よりも強い。
自分は子供もいないくせに父娘ものにはめっぽう弱くて、以前トリビアの泉探偵ナイトスクープで、いつもお父さんと一緒にお風呂に入ってた娘に「もうお父さんとはお風呂に入らない」と言わせる実験をやっていたけど、小田和正の『言葉にできない』をバックにお父さんの顔が悲しみにゆがむのを見て号泣してしまったことがある。っていうか、書いてて今もちょっと泣ける。自分が同じことをされたら妻と別れて娘を連れて遠くの街に逃げるだろうな。
当然『よつばと』も大好き。子どもができるなら娘が欲しいなあ。彼氏ができたって聞けば泣いて、結婚するって聞けば泣いてのすごいウザい父親になるだろうけど、自分に似たひねくれた男が生まれるよりは断然娘のほうが良い。
 
おとなしそうな顔してるくせにこんな過激な小説を書きやがって!というところが一番のツボなんだけど、これはなかなか人には言えない。
村上龍だとえげつないこと平気でやってそうじゃないですか。桜庭一樹の地味な顔(失礼)でおもいっきり淫靡で卑猥なことを書くところが大変よろしいのです。
 

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない


父と娘の関係性というならば『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』は外すことが出来ない。
主人公のクラスに、有名なミュージシャンを父親に持つ美少女、海野藻屑が転校してくる。美しい外観とは裏腹に「ぼくは人魚なんだ」真顔で語る奇妙な少女だったが、それは彼女が苛烈な現実を生きている証拠だった、というストーリー。
父親から虐待されることで、さらに父親のことを愛してしまう。閉鎖された環境における父娘関係の濃密さ・業の深さのようなものが緻密に描かれていた。それを父親のいない主人公の目線から語ることでより浮きだたてせているというか。
 
ゲーテかカントか誰かが「すべての関係は抑制された恋愛のことだ」と言っていたような気がする。たとえばぼくが友達に対して友情を抱くとする。だけどそれは「同性である」とか「社会的に許されない」とか「相手には恋人がいる」などの抑制によって友情という殻の中に閉じ込められているだけに過ぎず、その抑制が解けたときに恋愛へと発展する、ということ。
だから親子関係とはいえ、二人を縛る抑制がない状態(母親の不在・閉鎖的な空間)であれば容易に恋愛関係に発展しちゃう。『私の男』では父であり恋人であるという二重性が描かれていたけれど、今作の方はそこに虐待*1が絡んでいるだけより、業が深いかもしれない。ラノベなのに。ラノベなのにっ・・・!
 

少女には向かない職業

あたし、大西葵13歳は、中学2 年生の1年間で、人をふたり殺した。
夏休みにひとり。それと、冬休みにもうひとり。
武器はひとつめのときは悪意で、もうひとつめのときはバトルアックスだった。

物語はこんな出だしから唐突に始まっていく。女の子にはバトルアックスの一本くらいは隠し持っていてもらいたい*2。多分、自分が人に勧められる桜庭一樹作品と言うとこの本だけだと思う。ほかはちょっと性癖が明らかになりすぎて痛い・・・。本当に好きな本は他人には読まれたくないというこの矛盾・・・!
かといってこの本がぬるいかと言われたら全然そんなことは無くて、女の子の強さと弱さがしっかりまっすぐ書かれていてすごく好きな本です。『砂糖菓子…』でも『赤×ピンク』でも描かれているけど、女の子同士のお互いに依存しあうような、それでいて突き離すような関係性がまた良いんですよねえ。
 
(まだ続くかも)

*1:女の子が虐待されるのはものすっごいエロスが潜んでるとおもうんだけど、それは別の話なのでまた今度

*2:おともだちパンチでも可