ダブル・ジョーカー

ジョーカー・ゲーム』が面白かったので当然続編も面白いはず、と思って手に取った。

戦時中のスパイもの、と聞いて思い浮かべる凄惨さはどこにもなく、最初から最後まで爽やかに読めてしまうのが良いところ。特に今作はスパイ同士の争いに焦点が置かれているので、余計な雑音に気を紛らわすことなく狐と狸の化かし合いのような情報戦にのめりこんでいけた。変に史実にこだわったりしてテンポを崩すくらいなら、戦争でさえも物語に雰囲気を与えるための小道具に過ぎない、という割り切り方が好き。
純粋に面白さで言えばD機関が作られるまでのストーリーが含まれている前作が上だけど、続編もそれに負けないくらい面白かったです。
 
はてな年間100冊読書クラブ 243/229)
 
だけどコミカライズ版はどうしようもないんだよなあ・・・。

「幽霊」が連載されているのを読んだけど、セリフ過多でだらだらとしていて緊張感が無くて原作のキレがなかった。小説の筋を絵で追うだけではコミカライズとは言わないと思うんだけどなあ・・・。攻殻機動隊士郎正宗じゃないバージョンもひどいけど、やたらと小説をマンガにしようとする風潮はやめようぜ。杉基イクラみたいに、作者自身の工夫というかセンスを混ぜてこれる人ならいいんだけどさ。

桜庭一樹の代表作を上手に再構成したという点で贔屓目に見てしまうけど、それをさしひいてもこれは良かったな。いまは『もえタイ』みたいなゆる系のマンガを書いてたりするけど、自分は凄惨なタイプの作品のほうが好きだ。読み切りの『高橋待ち』のようないい感じの短編を集めて本を出さないかなあ。