禁断のパンダ

第6回「このミステリーが凄い!」大賞受賞作という肩書にふさわしい面白さだった。

序盤は料理の描写に引き込まれる。「口にした瞬間今まで食べてきた料理がゴミのように思えてしまう」とまで評される料理の描写が文章でできるのか、と驚いてしまった。
ミステリ自体はわりと手堅くて一般的な内容なのだが表紙とタイトル、そして料理という3題から連想される不安がつねにつきまとっていて雰囲気が良かった。もちろん期待通りのおぞましい真相にも満足。
だけど一番感銘を受けたのは、真相が明らかになってからの超特急の展開。唐突に目の前に突き出される死と暴力、そして人間という生き物の業の深さに完全に気持ちをもっていかれてしまう。一気に結末まで読み進み、そしてラストで再度の衝撃! 「ええっ!こんな結末なの!?」と、思わず2度、3度と読み直してしまった。最後の最後まで、欲望に駆られた人間の狂気というものがつきまとっていて、空恐ろしく面白かった。恐面いのが最近の好みになっている。
 
はてな年間100冊読書クラブ 214/229)
 
読後に思ったのは、『容疑者Xの献身』にはこの作品に特徴的な「物事を究めるためにする狂気」という部分が欠けていたな、ということ。最後に泣き崩れて人間性を露わにしてしまうせいで非常に安っぽいメロドラマになっていたのが画竜点睛的でよろしくなかった。