魔法のようなトリック

前回『恋文の技術』を絶賛したけど、だがしかし手紙といえばやっぱり加納朋子なのだ。

駒子シリーズの第二弾。今作もやはり、駒子が日常の中で不思議に思ったことを手紙に書き、それを瀬尾さんが謎解きをするという構造は変わらない。全くの不条理に思えた謎がするすると解かれていく様は、あたかも魔法のようだ*1
さらに今作では各短編に挟まれて、第三の人物からの手紙が入り込んできているのが面白くも恐ろしい。それぞれの短編の中に散りばめられていたヒントが最後の最後で実を結ぶ、という仕掛けに大満足。
 
この続きの『スペース』を先に読んでいたせいで思わずほくそえんでしまうような展開もあり、順序立てて読まないこともたまには良いものである。
はてな年間100冊読書クラブ 208/229)
 
ここで大きな問題があって、いま「駒子シリーズ」で加納朋子のファンになって、果たして他の作品を読んでも楽しめるかどうか、というのがなかなかに悩ましい。
「小市民(または○○限定)シリーズ」ですっかり米澤穂信のトリコになったが、それは米澤氏の作品が面白いからなのか、たまたまこのシリーズが面白かったのかがわからないため、他の作品を読めずにいる。読まなくてはわからないけど、読んでしまって合わなかったらもったいないような気もするのだ。
そういう意味でシリーズ物を書く人というのは難しい。まあそれは、自分の中で加納欲なり米澤欲が高まってくれば読めばいいし、それまでは全然違うジャンルを読めばよいのだが。

*1:それとも、魔法が解かれたようだと言うべきだろうか