読まれたくないほど好き

嫁は自分の読んでいる本のタイトルを知られるのを極度に嫌がる人なんだけど、この本を読んでちょっとその気持ちが分かった気がした。

黒と茶の幻想 (Mephisto club)

黒と茶の幻想 (Mephisto club)

すごい好きだ。だけどこの本のことが好きだとあまり知られたくない、そんな本。
人は旅をするとき、同時に自分の過去の記憶へも旅をしている。だから、旅を通じて自分たちの過去に秘められた『素晴らしい謎』を解きあかそう。
一言で言ってしまえばこういうテーマなんだけど、書いてるだけでわりと気恥ずかしい。それは多分、登場人物たちの何気ない会話ひとつひとつにザワザワと心を揺さぶられた自分の心が知られてしまう気がするから。
 
百科事典のような厚さに最初はひるんだけど、読み進めると一気に結末まで読まずにはいられなかった。多分他の作家だったらモチーフが甘すぎて読み切れなかったと思うけど、そこは恩田陸。甘さのすぐ下に鋼のように苦いミステリが潜んでいるので大丈夫。やはり恩田陸は良いなぁ。自分的には伊坂幸太郎と並んで両巨頭です。
 
143/200