人に勧めてみたい本

どちらかというと人に勧めたい本は、自分が好きな本というより『変な本』であることが多い。そういう意味ではこの本はお勧め。
 

独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル

 
ぜひ読んでみて、気分を悪くして欲しい(笑) でも、一見してグロテスクなのに、読み終わったあとはそれほど嫌な気分になっていないのが不思議です。
それは多分、残虐的なキーワードが読者を狙っていないから。あくまで物語を語るための小道具としてのスプラッター表現なので、本質的に怖さを追求していないのだはないかと感じました。限界状況にある人間の心理を浮かび上がらせる手法は、第一印象で嫌いにならなければ読み応えがあると思います。
 
モチーフはベタだけど、ラストがズバ抜けて良い作品が多い。自分が短編集が好きなのは、物語のエッセンスである結末が何度も味わえるからなのだと気づかされました。
一番良かったのは『オペラントの肖像』。全般的に素晴らしい閉塞感に満ちた作品が多いのですが、その中でもこの短編は、希望を見せておいてまるでギロチンの刃が落ちるように断ち切るさまが最高でした。
『卵男』は断ち切られたかに感じたカタストロフが全くの肩透かしに終わったことが、『無垢なる祈り』では断ち切られずに残った希望が、むしろさらに陰惨な道へと続きそうな予感を感じさせることに、それぞれ感動しました。残酷で目をそらしたくなる話なのにもかかわらず、もっと続きを読みたいという衝動が抑えられません。
 
ただ、やはり肉体喪失系のストーリーは苦手です。『怪物のような顔の女と溶けた時計の頭のような男』を通勤の電車の中で読んでいて、思わず吐きそうになりました。特にグレープフルーツ用のスプーンでアレをアレするところなど(( ;゚Д゚))ブルブル
最後の最後でホラーらしい作品が控えていた、というところでしょうか。
 
94/100