カニの逆襲

当たってしまった・・・orz
夜半過ぎに目覚めたかと思うと激しい嘔吐。すぐにゆでておけばこんな目に合わずに済んだのに。そのせいか悪夢を見た。カニの逆襲といえばいいのか。
ちょいグロなので続きを読むで。
 
 

暑いのに寒い。
寒いのは理由が分かる。自分が裸だから。風が強く吹いていてとても寒いのに暑さも感じるのはなぜだろう。風に混じる"何か"が体に当たるたびに、刺すように痛んで、熱く感じる。
足の裏が痛い。
裸足でごつごつとした岩の上に立っていた。血が滲んできているに違いない。それでも(この前いたところに比べればましだ)と思っている自分がいる。そうだ、ここは地獄なのだ、とふいに思い出した。
 
自分の傍らには小鬼がフワフワと浮いている*1。そいつに誘われるようにして岩山を登っていく。頂上はカルデラのようになっていて、くぼんだあたりに鬼が2匹、立っていた。その足元にはコンテナ車が一台転がっている。そこから考えると、鬼の背の高さはゆうに家一軒分はあるだろう。
鬼がコンテナを蹴飛ばした。その中からばらばらとこぼれ出たのはそう、人間だった。もう一匹の鬼がその中から一人の男をつまみあげた。生きてはいるようだが、ぐったりとして動かない。いぶかしんでいると小鬼が言った。
「地獄の瘴気を吸うとな、人間は麻酔にかかったみたいに腰が抜けちまうんだよ」
 
ぐったりしている男を地面に寝かすと、鬼は大きなハサミを取り出し、男の左腕をハサミでつまんだ。
バチン
激しい音とともに男の右腕は宙に舞い、くぐもった悲鳴をあげて体をビクン、ビクンと痙攣させた。周りに転がっている人間たちはその様子を見て、動かない体を精一杯震わせていた。恐怖なのか、それともなんとかして逃げ出したいのか。自分はと言えば、こみ上げる嘔吐を抑えるので精一杯だった。吐瀉物の匂いで鬼にかぎつけられてしまうと思い、必死で口を手でふさぐ。
 
切断音はさらに三度続けて鳴った。
その度に血しぶきが上がるのだが、かなりの出血にも関わらず男は生きていた。生かされているのか、それとも、死ぬことができないのか。
惨劇はまだ続く。ダルマのようになった体を表がえすと、股間の方からへその下までをハサミをあて、じわり、じわりと締め付けていく。仰向けにされたせいで男の苦痛の表情が良く見えるようになった。体をえびぞらせて逃れようとするも、その腹を鬼が太い指でぐっと地面に押し付ける。その勢いで内蔵が破れたのか、鼻から口から血が噴き出した。
 
ぐばお、ぐぼおと咳き込む声を掻き消すかのように、ガキン、と何かが割れる音がした。大バサミが骨盤を割り砕いた音だ。
鬼はハサミを足元に置くと、股間の裂け目に爪を突っ込み、大腸をズルズルと引きずりだした。それを両手でしごくと、先端から茶色い汚物が搾り出され、血の匂いで満ちていたあたりは、一瞬で糞尿の匂いでおおわれた。
もはや目からはなんの意思も感じ取れない、ただの肉塊と化した、それでもなお蠢く男の体を鬼は、ぐつぐつと煮えたぎる大鍋に投げ込んだ。
 
それを見ていた自分は、もはやその光景に耐えられなくなり、鬼に気づかれるのも気にせずに胃の内容物をあたりに吐き散らかした。
「なぜ、ああなっても生きているかって?」
小鬼は言った。
「言ったろう、瘴気を吸った人間はなかなか死なないんだ。それこそ首を刎ねでもしないかぎりはな」
ただ食べるだけなら、最初に首を刎ねてしまえば、そう思った気持ちを読み取って小鬼は笑う。
はっ、ただの肉を食って何が美味い。人間の苦痛がな、鬼にとっては最高のスパイスなんだよ
 
小鬼の声の調子が変わったことに、喉を焼く胃酸に苦しみながらも気づいて振り返ると、そこには巨大な赤い柱、いや、鬼の太い足がそびえたっていた。
「ひい、ひああ」
声にならない悲鳴を上げて逃げ出そうとするも、左の踵を万力のような指でつままれて、体は宙にぶらんと浮いた。
自分だけは食われないとでも思ったか
笑いながら鬼は、まるで玩具のようにこの体を振り回し、カルデラの中央に向かって滑り降りる。食われるのは嫌だ、鬼の指を引っかいて無駄な抵抗をするが、かえって指の力を強める結果になってしまった。踵の骨を砕かれて再び嘔吐。宙吊りになっているせいで胃液が鼻腔を逆流し、抵抗するどころではない。
 
カルデラの中央まで来ると先ほどのハサミを持った鬼が、何人目かの犠牲者をさばいている途中でこちらを振り返った。
鈍く光る、赤く血に染まった刃をこちらに向けて、鬼がゆっくりと迫ってくる。
摘まれている左足の、ちょうど膝のあたりに刃をあてて、
バギン
切断された痛みを感じるまもなく体はまっさかさまに落下し、岩山に後頭部を打ち付けて視界が真っ暗になった。
 
 
それからどのくらいたったろう。目を開けると、小鬼が何事も無かったのようにふわふわと浮いている。鬼はいない。体も五体満足だ。
(さっきのは)
「夢じゃねえよ」
思考をさえぎって小鬼が話しはじめる。
「夢じゃないならなんだってあんなことをするかだって?
それはな、お前さんたち人間の、心を壊すためだ
地獄に落ちた人間には生まれ変われない
苦痛と絶望で心を壊し、けだものの位置におとしめるのさ
 
さっきは運良く瘴気を吸う前だったせいですぐ死んじまったが、
いやむしろお前は運が悪いのかな
心が壊れるまで、何度でも苦痛を味あわされるのだからな!
 
再び大鬼と変じたのを見て逃げ出そうとするも足腰が立たず、腹を指でぐいと押されて地面に釘付けにされてしまった。苦しい、苦しい、苦しい・・・。
 

 
というところで目が覚めた。夢か、ではなく激しい吐き気だけは本当。慌ててトイレにかけこんでからは、一晩中出たり入ったりを繰り返しだった。これをカニの復讐と言わずなんと言うだろうか。
 
夢として見た長さはもっと短かったと思うのだが、凝縮されてまるで早送りのように物語が進んでいった。多分だが、寝ていてから吐きそうになる、ほんの短い時間のあいだにこの夢を見たのではないだろうかという気がする。
ところどころつじつまが合わないところを補足したが、よく思い出せばはしょっている部分もある。自分が食べられそうになるくだりでは、ウソウソ、食べないよーんと見せかけてやっぱりいただきまーす!というシーンが挟まっていたような気もするし。そんで「絶望も最高のソースなのだ」とかなんとか。まあ、あんまり思い出そうとすると吐き気も戻ってくるので、これでいいか。
 
教訓:カニは新鮮なうちに食べること。

*1:今思うとかなりコエムシそっくりだった