何が面白かったのか考える
"全部"が面白かったと感じた時でも、なぜ自分が面白いと感じたかを詰めて考えることが大事だと思うようになりました。これが読書記録をつけた一番良かったところです。思ったことをなるべく記述しようってことが難しいと思うことって結構大事だと思うんですよ。無知の知、ってやつでしょうか。
- 作者: 恒川光太郎
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/11
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 48回
- この商品を含むブログ (77件) を見る
まず世界観がすばらしかった。すぐ近くにありそうで、全然別の価値観で、理不尽で恐ろしい世界。それが主人公が成長するにつれ不可思議のベールが徐々に暴かれていく過程も良かったです。
そして起承転結のメリハリのつけかたが上手い。心温まる場面から身の毛がよだつ場面への展開がスパッとうまくきまっていて、その落差がしっかりしているほど"感情の動き"と書いて感動が大きいと感じました。つまり、ただ残酷描写がリアルだとか、ただ癒されるとかではダメで、両方ともをうまく表現できるからこその名作ではないかと思います。
この作品の一番のキモは主人公が変わるところでした(これが転ですね)。いいところで全く別の世界に話が変わってしまって非常に当惑させられましたが、読みながら「これはただの挿入ではなく、必ず後に繋がるんだ」という予感を感じたおかげで、上手く読み進めることが出来ました。これは結構大きな賭けでしたね。例えばこの前読んだ「ねじの回転―FEBRUARY MOMENT」のように、情景描写として平行世界を描く手法もあるわけで。そういう風に理解されてしまっては作品の魅力が相当減じてしまうと思います。
ラストがサラリと終わっているところもポイントが高い。ここで物足りなさを覚えるくらいのほうが名作っぽい。映画だと逆に「しっかり最後までやれ!」って思うのに。きっと小説の方が想像力のカバーできる範囲が広いからなんだろうなぁ。
14/100