ずっぽりと

 久々に小説を読んでみたら大当たり。売れる本というのはそれなりに理由があって売れるもんなのだなぁと納得です。

鴨川ホルモー

鴨川ホルモー

 ジャケット借りなので"ホルモー"がなんなのか謎のまま読み進めると、半分過ぎまでその謎は読者にも主人公にも明かされないという謎具合ですよ。
 基本的に構成はベタ。五行思想、学校対抗、三角関係、そして謎の美少女は自分に惚れている、とジュビナイルものの定番設定がどんどん押し寄せる。それでも「だが、それがいい」というか、誰もが学生時代に妄想したような出来事が適度なリアリズム/生活観とともに表現されているのを読むのは心地良い。ベタだけど、やられたなという気持ち。ずっぽりと感情移入できました。
 
 それだけに気になったのはラストシーン。あれだけ鬼と一体になれた後で(特に楠木など)、役目を終えて引継ぎを行う主人公らの気持ちはどのようなものだっただろう、そこらへんを深く掘り下げて欲しかった。ここまで完全に"青龍会"の一員として感情移入している身としては、いやに先輩たちもあっさりと別れてしまっているなと思ってしまうのだ。
 いや、そうやって思えるだけ、この作品が良かったということなのだろう。全部を拾おうとするあまりに冗長になるよりも、物足りないぐらいでちょうどいいのかもしれない。ホルモーもいいけれどこの作者の、全く別のものを扱った作品を読んでみたいと思えた作品でした。

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