帰宅

 終局後佐藤棋聖は「構想に無理があったようですね」とこぼしたらしい。穴熊に組んで端から攻めると、確かに5筋近辺がガラガラで隙だらけになってしまう。それでも玉が戦場から遠い分、端から攻めても大丈夫なのが穴熊だと思っていたんですが。

 ここから▲9五飛△4六歩▲同歩△3八角成で穴熊が崩れてしまっては拍子抜け。いや、穴熊崩しと言う点では勉強になるんですが、後手番では振り穴熊一辺倒の自分としてはなんとも微妙な気持ちになります。
 
 将棋の内容としてはまあまあでしたが、大盤解説会は期待以上に面白かったので結果オーライです。解説の佐伯昌優八段、中村修八段もとても気さくな方で聞きやすかった。時には2人よりも観客の方が鋭い読みを見せていたけど(笑)それも愛嬌と言うことで。
 それだけに対局場での緊迫感を味わった時には、将棋というゲームの孤独さを感じて身が引き締まる思いでした。こんなに大勢の人が考えても決定打が出ないような手について、たった一人で結論を出して、その責任を自分一人の背中に背負いこんで。プロの厳しさを思い知らされた瞬間です。普段よりずっと低い声の、真剣な目をした羽生王将の表情から目を離すことができませんでした。とても貴重な体験が出来たと思います。