プロ棋士はどう考えているか 〜中編〜

昨日の続き。松原教授は羽生三冠の大ファンで、北海道に来るたびに追っかけするくらいだったそうで、それが縁で今回の公演に来ていただいたとのことでした。
OHPで東大将棋の画面が映し出されます。ここからは実践譜を元に羽生三冠がどのように考えているかについての対談になります。

朝日オープン決勝 対藤井猛九段戦

松原「羽生さんが勝って良かったです。負けてたら紹介しづらくなってましたw」
先手藤井九段は藤井システムを採用。

  • 藤井システムはここ10年で3本の指に入る画期的な戦法
  • 穴熊狙いが明確なので自分は急戦にした。それを見て藤井さんは玉を囲った。臨機応変に手を選ぶ。対局前から先方を決めていくということは無い。
  • 中盤が終わるまでは確認作業。定跡の中からお互いの同意の下で手が進んでいく。
  • (へんな角を打ったところで)打つ手が無ければ手を渡す。手の渡しあいで一局になる。直線的に進んでだめならば曲線的な手を打つ。
  • お互い指せる手が無い。後の先の取り合いになった。

今後の将棋について

今度は前回の世界コンピュータ将棋選手権決勝、Bonanza対YSSの模様が映し出されました。Bonanzaが無意味に角と銀を交換したところで、
松原「2chなどではこのような手を”ボナる”と言われています」これには羽生三冠も爆笑。
羽生「コンピュータの評価関数は角の方が銀よりずっと強いはず。それにこだわらないのがすごい」
松原「開発者の人は将棋がまったく分からない人で、ソフトに過去の棋譜を読み込ませて強くしたそうですよ」
羽生「それなら普通は角のほうを大事にするはずですよね」
松原「でもこれで勝っちゃったから、なおさらこういう手をさすかもしれません」
羽生「なるほど(笑)」

  • 人間の将棋とコンピューターの将棋はまったく異質な強さ。変だけど強い。
  • コンピューターはここ最近強くなった気がしている。今後どうなるかはまったく予想がつかない。
  • 道具が進化して創造性の概念が変わった。勝つためならば人の戦法をたやすく真似ていいのか、そのせめぎあいが難しい。
  • 新手を指すにはリスクがいるが、プロなのでやらなければならないと考えている。

お互いの主張を通しあうところまでが「直線的」、妥協点を探すところが「曲線的」ということなのかな? 手を見ながら臨機応変に進んでいくので、最初に羽生三冠が言っていた「10手先を読むのも無理」というという言葉はここらへんが理由なのかもしれません。
コンピューター将棋の専門家にもかかわらず東大将棋の操作にとまどう松原教授にちょっとがっかり。もうすこしかいつまんで棋譜を用意してください。無言の間がもったいなかった。
明日は質問コーナーの内容についてまとめます。名人戦のこととか「聞いちゃったよ(爆)」みたいな内容もあったり、聞きに来ていた人はかなり質問を練りこんでいた様子です。