4日目

昨日はいろいろと興奮したせいでほとんど寝つけなかった。夜も看護士さんが血抜きに来るので寝たふりをしたまま、就寝できたのは午前3時過ぎになってからだった。
眠れずにベッドで何度も姿勢を変えながら、これで晴れて一人前の患者になったんだと考えた。確かに悪いところがあって入院していたことには違いないんだけど、今までの自分はモグリの患者だったような、そんな気持ち。病院とは"不具性"が高いものほど尊ばれ、敬われる世界なのだ。入院したときに(本人的に)五体満足だったせいで違和感を覚えていたけど、自分はいま手術によって賦与された"不具性"のおかげで完全なる患者として存在することになった。点滴を受け、手術の跡には血を抜くためのドレーンがあり、麻酔が切れるまでは立って歩くことができないような体になって初めて、ここにいる資格が与えられた気がした。入院とは旅に近いものかもしれない。
 
いい天気なので同室の人はほとんど散歩に出かけています。とても静かな午後です。
 

読書の記録

安静にすることが仕事なので、とりあえず猛読する。今日までに読んだ本は以下の通り。

デジタルバックパッカー インドシナうろうろ

デジタルバックパッカー インドシナうろうろ

東南アジアをモバイルしながら放浪するという無謀な旅行記。実践的で相当に面白い。5年前の本とはいえ各国の状況は当時より良くなることはあってもその逆は無いだろうから、かなり参考になりそうだと思いながら一気に読んだ。筆者がデジタル後進国を、モバイルのために大荷物を抱えてうろうろするところを読むと、こういう旅にこそW-ZERO3みたいな小さくてオールマイティーな端末が良く似合うのにと思って残念だ。現状ではGSMと互換できないし、国際ローミングにすら対応していない。近い将来ゼロ3片手にアジアを旅できるようになったらすごく楽しいだろうな。
フクロウ―私の探梟記 (教養選書 48)

フクロウ―私の探梟記 (教養選書 48)

フクロウ好きなのでタイトルだけ見て借りたんだけど、正直言って中身が無い。写真も少ないし、知識はないけれど興味だけで書きましたという本だ。本題のフクロウのことよりも作者がやたら投獄されていることの方が気になる。
遠い太鼓

遠い太鼓

何度読んでも飽きがこない本。村上春樹の著作では小説よりもエッセイやノンフィクションものが好きなんだけど、この旅行記は格別だ。事実だからこそシンプルだし、感動もあるし、非ドラマチックだったり。等身大の南ヨーロッパ滞在記である。大江健三郎は自分には合わないようです。一章目でダウン。
ミッドナイト・エクスプレス (沢木耕太郎ノンフィクション8)

ミッドナイト・エクスプレス (沢木耕太郎ノンフィクション8)

深夜特急」を一冊にまとめておまけをつけた豪華本。これも「遠い太鼓」同様既読なんだけど、しっかり腰を落ち着けて読み直したかった。デジタル〜でアジア旅行記を、遠い〜でヨーロッパを読んだ後だったおかげで、なおいっそう物語が深く楽しめた気がした。
 
これで借りてきた本はのこり11冊。せっかくだから読んだことが無い作者のを、と思ったけど、根本的に好みと合わなかったりして難しい。やっぱり本は、自分と合う作家を見つけるコストが漫画と比べて高い。漫画雑誌を読めば読んだことが無い作品をチラ見できるし、それだけで絵柄の好みを判別できるけど、文章だと実際に手にとって読んでみるまでは分からないし、連載を読んで「よし、本を買ってみよう」と思ったこともない。知らないけど自分に合う作家を探すコストを考えると一度読んだ本を読み直したり同じ作家の本を読破しようとするの方が楽なんだよね。チャレンジャー精神にかける生き方だけど。
しかし旅行記が好きだな、自分は。